座間味沖でダイビングを楽しんでいた男性が、船に上がった後に死亡した事故について
徹底検証していきます。
まずは琉球新報のニュース記事から。
13日午前11時20分ごろ、ダイビング業者のスタッフから、男性客が船上で意識不明の状態になったと118番通報があった。座間味島沖のポイント知志でダイビングをした男性(46)=長野県=が船に上がった後、意識不明となった。島内の診療所に搬送されたが、同日午後0時15分ごろ死亡が確認された。
13日午前11時20分ごろ、沖縄県の座間味島沖のダイビング船から「ダイビングをしていた男性が意識不明の状態になった」と118番通報があった。那覇海上保安部によると、友人とダイビングツアーに参加していた会社員の男性(46)=長野県在住=がダイビング終了後に船上で意識不明となり、約1時間後に搬送先の島内の診療所で死亡が確認された。死因は調査中。
座間味ってどんなところ?
概要
西方約40kmの慶良間諸島のほぼ中央にある座間味島にあります。
人口は597人、世帯数は358世帯と小さな離島で
産業の中心は観光業。
古座間味ビーチや亜真ビーチなど世界に誇る美しい海を求めて
ダイバーだけでなく、国内外から多くの観光客がこの島に訪れます。
座間味へのアクセスは?
沖縄県那覇空港より泊港まで、タクシーもしくはバス、モノレールで行き、村営のフェリーを利用する。
座間味でダイビングを楽しむには?
座間味村にあるダイビングサービスを利用するか、沖縄本島のダイビングショップからボートで行くかの2通り。
事故当日の天候は?
ダイビングポイント知志ってどんなところ?
太古の昔、珊瑚礁が隆起して出来た島であろうと思われるダイナミックな
地形に富んだ場所で、大きな洞窟や大きな割れ目があります。
一方、浅場にはテーブルサンゴが広がっており、浅場でも深場でも
見所があるポイントの1つでもあります。
大潮であってもあまり流れがないため、初心者や経験の少ないダイバー
ブランクダイバーでも楽しめます。
オープンウォーターでも行けますが、やはりもう1ランク上のアドバンスド・オープンウォーターは
欲しいところです。
事故が起きた時の天気は?
事故が起きた2021年8月13日午前11時20分頃の沖縄県、本島中南部(那覇)座間味村の天気は晴れ。
降水確率は10%で気温は28℃。
最高の真夏のダイビング日和でありました。
気になる波の高さは?
当時の風の強さは南の風7m。
7mの強風の中、なぜスキューバダイビングをしたのか?
とお思いの方がいらっしゃるかもしれませんが、夏は台風や温帯低気圧の発生の有無はともかく
南の風が強く吹くことがあります。
これは琉球諸島や奄美群島の離島全般同じことが言えますが、北側は島影になっており比較的おだやか。
そういったところから、夏は南風を避けて北側のポイントで、冬は北風を避けて南側のポイントで
ボートダイビングをするのがセオリーとなっており、海況は問題なかったといって構わないでしょう。
エントリーの仕方に問題はなかったか?
前述した通り、比較的初心者や経験の少ないダイバー
ブランクダイバーでも楽しめるダイビングスポットの1つでもあります。
基本的なダイビングスタイルは、ボートでポイントまで行き
アンカーを打ってボートを停泊させる場合と
アンカーを打たずに船長は船に留まりエントリーする場合と2通りあります。
アンカーを打ってボートを停泊させてエントリーするメリット
大きなメリットはやはり潜降のしやすさでしょう。
アンカーが海底に打ってあるので、自分のペースで耳抜きをしながらロープを伝って潜降することができます。
初心者や経験の少ないダイバーにとってありがたいシステムです。
エキジットする際の安全停止もロープにつかまることができ、中性浮力が不得意な方でも
安心して安全停止ができるところでしょう。
デメリット
最初に潜降した方と最後に潜降した方とのタイムラグが生じることでしょう。
エアー持ちが厳しい方が後の方でエントリーしてくれればいいのですが、最初にエントリーしてしまった場合
ツアーの時間が短くなってしまうことです。
ショップ側の人間からすれば後回しにしたいところですが、そういう方に限って早くエントリーしたがるもの。
先に行こうとするゲストの方を後の方にしてもらうというのは、そう容易いことではありません。
インストラクター1人でガイドをする場合、先にエントリーした方の状況が把握しにくいところがあります。
助手がつく場合は先に助手をエントリーさせ、アンカーを固定させた後
ゲストの方をチェックすることもできますが、少人数で経営しているダイビングショップが多い中
なかなか現実的ではありません。
また、アンカーを打つことから稀少なサンゴを痛めたりすることがあります。
サンゴがないところを狙ってアンカーを打つものですが、100%問題ないかといえばそうではありません。
そういった環境保護の観点からアンカリングをしないショップが増えてきています。
アンカーを打たずに船長が船に留まってエントリーするメリット
別名ドリフトとも呼びますが、大きなメリットは水面で集合して同じタイミングで潜降することでしょう。
エアーの残量も把握しやすいですし、潜降時に起きやすいロストも防げますし
リゾート型のダイビングサービスには所謂一見さんが多いもの。
潜降している姿を見てスキルを把握することもできます。
エキジットする際は、必ずしも同じ場所まで帰ってくる必要がなく、広範囲を見て回ることができます。
デメリット
耳抜きが苦手な方は潜降で苦戦するかもしれません。
耳抜きに集中していると、周りが見えなくなることがあり、知らず識らずのうちに流されることもあります。
沖縄の海、特に慶良間諸島に位置する座間味島はケラマブルーと呼ばれる世界的にも有数な透明度を誇る海域ですが
見えてるだけに流されていることに気がつかなくなる恐れがあります。
また、エキジットする際の安全停止などでは掴まる物がないため、中性浮力のスキルを求められます。
さらに引率するインストラクターと船長とできちんとコミュニケーションが取れていればいいのですが
そうでない場合や経験の浅い船長の場合、ダイバーたちを見失ってしまうことがあります。
ダイバーたちが吐く泡を見落とさなければいいのですが、必ずしも海況がいい時ばかりではありませんし
むしろ海況があまりよくない時ほどアンカリングをしないものです。
こういったことからロストしてしまう恐れがあります。
座間味でのエントリー方法は?
アンカーを打つショップとドリフトのショップがあります。
エントリーの仕方でショップを選定するというのもいいでしょう。
なぜ事故が起きたのか?
ではなぜ、初心者や経験の少ないダイバー、ブランクダイバーでも楽しめるポイントで
事故が起きてしまったのでしょうか?
1つ1つ検証していきます。
意外とスキルが求められるポイントでもある
前述した通り、初心者や経験の少ないダイバーやブランクダイバーでも楽しめるダイビングポイントの1つです。
ですがクレバスといって、大きな岩の割れ目に向かって潜降することが楽しめる地形のポイントなのですが
斜めに潜降するよりも垂直に潜降する方がスキルを求められます。
なぜなら斜めに潜降する場合は、少しずつ水深が深くなっていくことに対し
垂直に潜降する場合は、潜降スピードが早くなるからです。
また、明るいところから暗いところへ行くことに怖さを感じる方もいらっしゃいます。
そのことがストレスに感じ、パニックになった可能性も否定できません。
意外とロストしやすいポイントでもある
ですが時にガイドを見失うこともあります。
きちんとバディシステムが取れていれば解消されることもありますが
リゾートダイバー同士、一見さんばかり。
ダイビング前のブリーフィング時にバディを組むように
セッティングしていても筆者の経験上、水中ではバラバラになります。
ベテランの方ほど、水中では一人になりたがるものなのです。
本州では西伊豆にある雲見という全国でも有数のダイビングスポットがあります。
今回事故があったダイビングポイントの知志と同じように、地形派ダイバーには根強い人気がある
ダイビングスポットですが、たびたび事故やトラブルが報告されています。
そのほとんどがロストによるものです。
気がつけば周りに誰もいなくなっていた。
少し辺りを探して誰もいなければ浮上すればいいのですが
パニックになってしまい、そのまま探し続けることを選択して
エアーの残圧がなくなってしまって溺死…。
ありえないとお思いでしょうが
よくあるといえば語弊がありますが、十分想定できる事故であることは間違いありません。
浅場での中性浮力は難易度が高い
ご存知の通り、サンゴは太陽の光が届く比較的浅い水深で生息しています。
右の画像のように一見、楽に泳いでいるように思われがちですが
浅場での中性浮力は非常に難易度が高いスキルでもあります。
というのも、深場から浅場へ行く時に忘れがちなのが
BCDの中のエアーを抜くこと。
空気が膨張して一気に水面に持って行かれることがあります。
だからといって今回の事故のように、浮上してすぐに死亡というのは考えにくいのですが
トラブルが起きやすいエリアの1つでもあります。
自分の健康状態を過信する年齢
意外と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ダイビングにおいての死亡事故は高齢者よりも中高年が多いです。
理由は自分はまだ若いと思っているところです。
ですが実際は身体が衰え始め、持病もチラホラ出てくる年代。
それ自体に気づいている方であればいいのですが、自覚症状がない方がほとんど。
おまけにスキューバダイビングを楽しめる方の多くは、中間層から富裕層辺りのレジャーに
お金を使うことができる層で、日々仕事などで忙しくしている中で
束の間の休日にダイビングを楽しむ方も多くいらっしゃいます。
ご自身が思っていた以上に体力を消耗していてのダイビングツアーへの参加。
健康状態に問題はなかったとしても、疲労が蓄積していた可能性もあります。
また、自覚症状がないまま新型コロナウイルスに感染していたケースもあるかもしれません。
新型コロナウイルスがダイビングに与える影響については解明されていないでしょうが
肺に与える影響から考えても、感染している恐れがある場合はやめておいた方がいいでしょう。
どこのダイビングショップが事故を起こした?
座間味村には多くのダイビングショップがあります。
前述した通り座間味村だけでなく、沖縄本島から来るダイビングサービスもあります。
確認されただけでも30店舗以上はありますが、どのショップが事故を起こしただとか
誰がインストラクターであっただとか、誰がガイドであったかを詮索することは適切ではありません。
先日の柏島での体験ダイビングの事故でもそうでしたが
聞けばどこのショップで誰が事故を起こしたというのは分かりますが
すでに悲しみに包まれている中、掘り起こすのはよくないことだと考えます。
まとめ
いかがだったでしょうか?
前回の柏島での体験ダイビングにおいての事故の記事が非常に好評?であったため
今回は前回よりも掘り下げて記事にしてみました。
筆者はスキューバダイビングのインストラクターはすでに引退し、今は猟銃を担いで猟犬をお供に山を回っています。
スキューバダイビングも狩猟と同様、ある一定のリスクを背負った遊びであることは間違いありません。
そのリスクが大きければ大きいほどリターンも大きいものと考えがちなのですが、実はそうでもなく
リスクを最小限に抑えて最大限に楽しむものがダイビングであり、ハンティングでもあります。
ですが、スキルを磨くことばかり考えることはよくありません。
あなたは何を目的にダイビングを始めたのでしょうか?
中性浮力が上手になりたいためですか?
潜降するのがうまくなりたいためですか?
いいえ、普通の人が体験できない水中の世界を覗くことや水中の活きた生物を見ること
海底から空を見上げることではないでしょうか?
楽しむことを大前提にし、楽しむためには…という形で安全に配慮したり、スキルを磨いたりしてください。
信頼できるショップやインストラクターが、あなたのお手伝いをしてくれることでしょう。
ダイビング中にもし遭難してしまった時のために、あると超便利なアイテムをご紹介します。
1、ホイッスル
声だけではなかなか聞こえません。
海上で笛の音はあり得ないので、何かがおかしいと付近を捜索している方に
気づかせることができます。
BCDのポケットに入れ、Dリングと結んでおきましょう。
2、ダイビングミラー
太陽の光を鏡に当て、漁船などの方に自分の位置を知らせます。
遠くから自分の居場所を教えるために最適なアイテムの1つです。
こちらもBCDのポケットに入るサイズで邪魔にならないもの。
常に携帯して欲しいものです。
3、フロート
こちらも安全装備にはかかせないアイテム。
オクトパスからエアーを送り込んで展開させ、自分の居場所を常にアピールさせることができます。
トラブルが発生して初めて使うのではなく、実際に使ってみて
いざとなったら焦らずに使えるようにしておいた方がいいですね。
4、ダイビングライト
今は昔と違って、スキューバダイビングで使用できるライトは安価になりました。
僕自身も実際こちらのメーカーの物を使用していますが、安価にも関わらず十分信頼できます。
これ1本で通常のファンダイビングはもちろん、ナイトダイビング、遭難時、災害時にも役立ちます。
また付属で21700の充電池と専用充電器も付いていますし、18650の充電池をお持ちの方は
付属でアタッチメントが付いていますので流用できます。
5、カレントフック
特に流れのあるポイントの場合は、あった方がいいアイテムの1つです。
岩に必死にしがみつくだけでストレスと体力の消耗になります。
特に写真や動画を撮る方は、このカレントフックがあれば両手がフリーになるので撮影しやすくなります。
スパイラルコイルタイプがありますが、流れが強まったり、弱まったりするポイントではビヨンビヨンなるし
耐久性が悪いので、僕はロープタイプを使用していました。
常にBCDの中に忍ばせており、Dリングに取り付けて使用。
使わなくなったら、とりあえず丸めてBCDに入れておき、ダイビングが終わったら塩抜きして乾燥させ
かさばらないようにまとめておけばOKです。
6、ダイビングナイフ
僕は必要と感じたことがなかったので、携帯していませんでしたが
必要と感じる方は携帯しておいてもいいかと思います。
7、マーカー(海面着色剤)
一時期は販売していましたが、今では見かけることはありません。
お客さんがマーカーをBCDに入れていて、エントリーしてパッと振り返ったら
バスクリンのような黄色いケムリ?がバンバン出ていたことがあります…。
エントリー直後だったので、僕がBCDから取り出し、ケースをアンカーにくくり付け
ツアーを行ったのですが、ビックリするくらい辺り一面バスクリンでした…。
万が一、遭難しても海面で放てば分かるくらいアピールできるものですが、僕の体験からはオススメしません。
完全防水タイプで、水圧に耐えうるものであればいいかもしれませんが…。
新米猟師よりより
元スキューバダイビングのインストラクターで潜水士。
前世はポリネシア人の漁師らしい。
YouTubeチャンネルJIMNY 4 LIFEにてJB64ジムニーの紹介動画や
狩猟、釣り(主にカヤックフィッシング)、キャンプの映像を配信中。
ブログ、Facebook、Instagram、TwitterなどのSNSでも情報を配信。
夏はカヤックフィッシングやキャンプ、秋口〜春先にかけては主にイノシシの有害駆除の様子を
自身のYouTubeチャンネルで配信。
だが、全く法律違反していないのに誰かが通報し、警察署へ呼び出され
そのことをYouTubeで言って、記事を書いたらバズる。
先日有料級の記事を書いたらえらく好評だったので、シリーズ化したいと思ってる。
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趣味はプロレス観戦。
好きなプロレスラーはケンドーカシンなどのマスクマンや、グレートムタなどの怪奇派レスラー。
猟犬カシン
令和元年11月22日生まれで今現在1歳8ヶ月のオス。
(2021年7月現在)
よくラブラドールレトリバーに間違えられるが
父に実猟系の紀州犬、母に日向犬を持つ純和犬。
名前はプロレスラーのケンドーカシンに由来する。
普段は人や飼い犬に対してフレンドリーな性格を持つが
イノシシを前にすると勇猛果敢に吠え立て突っ込み、場外乱闘を得意とする。
そのため常に生傷が絶えない。
今年(令和3年度)の活躍に期待。
YouTubeでのカシンの成長記はコチラ!
猟犬見習いタイガー
令和3年2月2日生まれ。
(正式な誕生日は分からないが、大体このくらいだろうとしている)
保健所がかけた罠で捕獲され、殺処分のところを引き取り
猟犬見習いとして飼育、訓練中。
名前の由来は息子の意見を採用し、タイガーマスクからタイガーと命名。
だが、筆者は勝手にタイガージェットシンから由来と決めつけているが
第一希望であったブッチャーにしておけばよかったと後悔している面もある。
好き嫌いは全くなく、とにかく食欲旺盛。
スワレ、オテ、オカワリ、フセ、ゴロン、呼び戻しはほぼマスター。
来期(令和3年度)デビューの予定なので、箱罠にイノシシがかかり次第、単犬であててみたいと思っている。
YouTubeでのタイガーの成長記はコチラ!